7、落武者の幽霊(会社員 岡山県 31 高島じゅり様)

 

以前、友人のアパートに訪れた時の話です。

 

その友人からは事前にそのアパートで心霊体験をしたと聞かされていました。

 

寝ているときに金縛りにあい、カーテンに目をやるとカーテンのつなぎ目から落武者がこちらを見ていたというものでした。

 

その話を聞いた1年後くらいに、友人宅に遊びに行きました。

 

中に入るとなんて事のないただの1Kのアパート。

 

霊感の無い私は当然何も感じることはなく、友人の心霊体験の話のことなど頭の片隅にある程度で、ほとんど気にすることなく楽しく談笑していました。

 

夜も更けて深夜2時、3時くらいでしょうか。

 

私はベッドで寝転びながら足元のテレビを見ている。友人は傍らのソファーで寝息を立てている。

 

すると突然空気が一変しました。

 

何かきっかけがあったわけでもなくいきなり、息苦しいというか空気が重くなったのです。

 

私は霊感などないので初めての感覚に驚き戸惑い、体をお越し周囲に目をやります。

 

そこでテレビの横にクローゼットがあり、沢山の服の隙間の奥に姿鏡があることに気づきます。

 

ベッドの足元に鏡を置くと霊の通り道になると聞いたことがあったので、このせいで友人は心霊体験をしたのでは、と焦りました。

 

鏡の存在、空気は重く苦しい、私はこの異常な事態にますます焦ります。

 

友人はスヤスヤ寝ています。

 

私はゆっくり部屋の隅々に目をやります。

 

すると衝撃的なものを見てしまいました。

 

ベッドの上にあるエアコンには分厚く埃がかぶっていました。

 

そのエアコンにはっきりとくっきりと手形が一つありました。

 

私は思わず絶叫し、友人を起こそうとしたのですが、声をかけても体をゆすっても起きません。

 

頬を何度か叩いた時にようやく起きたのですが、その時の友人の顔はまるで何かに取り憑かれたかのように違っていました。

 

目は血走っていて、こちらを睨んでいます。

 

む私はこれは友人の冗談でもなく本当に取り憑かれたと思いました。

 

頬を何度も叩き、声をかけると我を取り戻したのか、「どうかした?」と呑気な声で応えました。

 

私はすぐにでもこの場を離れたい一心で、荷物を大急ぎでまとめて友人宅をあとにしました。

 

落武者の霊、体験した事のない空気の息苦しさ、エアコンの手形、取り憑かれた友人。

 

テレビ等でしか聞いた事のない現象、一生忘れられない経験をしてしまいました。

 

8、髪の毛の音(会社員 高知県 27 マベチ様)

 

数年前に私が住んでいたアパートでの出来事です。

 

一人暮らしを始めて間もなかった私は何となく心細く、しょっちゅう彼氏を呼んで泊まらせていました。

 

料理が出来上がるのを待っていた彼氏は急に立ち上がり、お風呂場の方へ向かいました。

 

ちょうど火を扱っていたのですぐに反応はできなかったのですが、直後に「うわっ」という声が聞こえたので、何事かと思い振り返ると、真っ青な顔をした彼氏がお風呂場を見つめながら固まっていました。

 

私はガスコンロの火を止めて彼氏の方へ向かいます。

 

ゴキブリでも出たのだろうかと思い、恐る恐るお風呂場を覗いてみると、壁に引っ掛けていたお風呂洗い用のブラシが床に落ちていました。

 

「フックの粘着が甘かったのかな?驚かせてごめんね」と笑いながらブラシを拾いに行ったのですが、直後、思いもよらない光景に「ひっ」と声が出てしまいました。

 

そのブラシの先端には真っ黒で長い髪の毛がごっそりと絡みついていたのです。

 

私は当時、茶髪のミディアムヘアでした。彼は黒髪でしたが、男性の平均的な髪の長さだったため該当しません。

 

「大きな音がしたから来てみたら…」怯えた声を聞くと余計不安になり、私は彼氏のもとへと駆け寄りました。

 

お風呂場の真ん中にあるその異様な姿のブラシから二人とも目が離せず、しばらく茫然としていました。

 

昨日まではついてなかったのに。

 

しばらく二人で怯えていましたが、意を決した彼氏がブラシを持ち上げると、その髪は排水口へ繋がっていました。

 

ブラシを引っ張ると、ぶちぶち。

 

と髪の毛がちぎれる音が。

 

急いで色付きのビニール袋にブラシを入れ玄関の外に投げ捨て、その日はお風呂に入らず一晩を過ごしました。

 

次の朝、玄関前に放置していた袋を彼氏がそうっと開けると、不思議なことに、髪の毛一本付いてないいつものブラシがあるだけでした。

 

おかしいな?そう思い、お風呂場へ行き排水口を覗いてみると、昨日「ぶちぶち」とちぎれたはずの髪の毛さえきれいさっぱりなくなっています。

 

私たちは余計に怖くなってしまい、その日のうちに不動産屋へ連絡し、部屋を出ることに決めました。

 

さすがにあのお風呂を使う気にもなれず実家に帰ることにしましたが、その後不思議な現象は一度も起きませんでした。

 

次の引っ越し先で同棲をすることになり、今はその彼氏と結婚し、別の町に住んでいます。

 

最近例のアパートの前を通ったのですが、その部屋は今も空室のようです。

 

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